2017年9月24日日曜日

職人冥利の修理依頼-日光下駄・倉田工房

先日、1年程前に手仕事専科より、お求めいただいた日光下駄(倉田工房)の修理依頼が、御座いました。
草履型の男物でした。
「随分と履かれたのでしょうね!!」
すっかりと草履底のゴムがなくなり、鼻緒も伸びてしまい、甲に当たるところも摩り減っていました。
倉田監さんに言わせると「もう少し早い段階で、鼻緒を締直していると違うのですが。」ということでした。
鼻緒が伸びているのは、重心を踵に置かずに親指に置くからだそうです。
下駄は、後ろ重心で鼻緒を突っかけるように履くのがコツです。
別珍の布地は、剥がしてその上に新しい別珍を巻くことになります。
幸い竹皮の部分は、親指のところが摩耗していましたが、何とかそのままで取り付けられそうでした。
今回の修理は、台木交換と草履を台木から外して、鼻緒を差し替えることで出来るものでした。
一週間ほど、お時間を頂戴して、修理いたしました。
倉田さんも言っていましたが、これまでに履かれた方は、初めてだそうです。
職人冥利に尽きると言えるのでしょうか。

修理には、修理代金の外に往復の送料とが、掛かります。新品程の価格にはなりませんが、使い捨ての時代には、新しいものに買い替えても不思議ではなかったように思います。
次回は、履くことで修理の効かない竹皮の痛みが進むと新しいものと差し替えるようです。
手仕事品に愛着を持って、お使いいただけることに感謝いたします。
そして、修理して使えるものは、修理して使い、その上で新しいものに替えることです。
勿体ないの気持ちは、このようなことなのかと思います。
これらのことは、手仕事専科の「和美との生活」のテーマです。
※倉田工房は、現在御病気から、製作が出来なくなりました。
  代わって、日光下駄山本政史をご紹介します。
持ち込まれた日光下駄
鼻緒が伸びています。
しかし、竹皮の草履部分は、
使えそうです。
桐の台木とゴム底が完璧に
摩り減っていました。
差し替えるしかありません。
台木の交換です。
台木を差し替えて、竹皮の草履部分を
取付ました。
鼻緒もかつての別珍の黒布で
巻き付けました。
もう暫くは、履けるようになりました。
最近、妻が体調が悪く、勝手仕事などが、難しくなりました。代って、自分が、調理をするのですが、その台所のゴミの多さに驚きます。
かつて、資源を大切にということで、4R(1.Refuse(リフューズ)・2.Reduce(リデュース)・3.Reuse(リユース)・4.Recycle(リサイクル))が、叫ばれていました。しかし、私たち国民は、資源の大切さよりも利便性を選択しています。
自分が、20代にヨーロッパを旅した時には、スーパーの有り様が、アメリカナイズされておらず、果物や野菜を包むのは、新聞紙でした。同様にドリンクもreturnableの蓋付の1L瓶だったのを覚えています。「ヨーロッパは遅れているな」と思ったものです。しかし、今思うと未熟でした。
私たちは、「生活が一番」ではなく、「次代に何を残すのか。」「未来の子どもたちに何を引き継ぐのか」を問うべきだと思います。
インディオのことばに「自然は、未来の子どもたちからの預かりもの」が、有ると聞きます。

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2017年9月15日金曜日

日展作品に取り組む貴田洋子氏をたずねて

先日、東京にでた折に現代津軽こぎん刺作家貴田洋子さんを所沢・航空公園にあるアトリエに訪ねました。
彼女は、日展制作に意欲的でした。
手仕事専科に美術工芸作家の紹介頁を創ったのも彼女の力が大きいと感じています。
他にも幾人かの作家の方を掲載する予定ですが、美術工芸は、土地との因縁が欠かせないようです。
アートに対するDNAは、突然変異で生れることはないのです。
彼女のこぎん刺しに向かう情念が、色使いや八咫烏(やたがらす)の飛翔に現れています。
今回の作品から「華もどこ」という刺し方が、生まれました。
貴田洋子氏は、従来、もどこ(文様)は、次の基本で刺しています。
・花こ
・結び花
・豆こ
・かちゃらず
・石畳
ですが、「華もどこ」は、それらの集合的な刺しから生まれる凹凸の文様です。
貴田洋子氏は、それを「華もどこ」となづけました。
こぎんを刺す方には、そのことが分かるかと思います。
今回の作品名は、「津軽・ふるさと華の舞」(仮称)だといいます。
作品は、まだ完成していないようです。
完成したその時に決めるといっていました。
晴れて、日展にご入選されて、国立新美術館で拝見したいと思います。
後日、仮称だった作品名が、決まりました。
・津軽古布(コギン)・赫きの舞(つがるこぎん・かがやきのまい)
今年の日展の入選を楽しみにしています。

現代こぎん刺し作家
貴田洋子氏
「華もどこ」意匠
いろいろな刺し文様が、あわさって、
凹凸が見えます。連続のもどことはことなる
意匠です。
こちらの色だけ、異なりました。
木綿をほぐして、その糸を使い
刺したといいます。
面白い風合いが楽しめるようです。
八咫烏が飛翔しています。
不思議な鳥です。
津軽ににあう鳥です。
高層のアトリエからは、スカイツリーや遠くに富士山が見えます。
お忙しい中、あまりお邪魔しないようにしていましたが、あっという間のたのしい時間を過ごしてきました。
驚いたことが一つありました。
私の話す社交ダンスの修練と書道のコツが、経験を持たない貴田洋子氏にわかるのです。
まるで、社交ダンスの経験を持つようでした。
芸術に秀でる方の感性は、同じなのかもしれません。

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今回の日展要項は、
・改組新第4回(平成29年度)日本美術展覧会
・会期 平成29年11月3日(金)~12月10日(日)
     午前10時~午後6時
     (毎週火曜日休館)
・会場 国立新美術館
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